gp500physics’ blog

元・GP500 Physics 開発ブログです。

Ryzen 9 5950X を超スリムでコンパクトな SilverStone ML08 に搭載して常用してみた。

Ryzen 9 7950X がやってきて、余ってしまった Ryzen 9 5950X。なんだかもったいないので、メイン機に入らないかと試行錯誤をしてみました。結果的には無事、常用することができています。

メイン機にこの 5950X を組み込む上での最大のネックが発熱と消費電力です。簡易水冷でもフル稼働させれば 80℃ に達します。メイン機のケースは Silverstone ML08。幅 9cm を下回る、超スリムでコンパクトな筐体です。電源は SFX 規格の 450W で、それほど余裕があるわけではありません。

CPUクーラーはこのケースに収まるものの中では最大となる、BIG Shuriken3。12cmファンを採用するも、全高はわずか 64mm。この時点でメイン機に入っているのは Ryzen 7 4750GTDP 65W、とても低消費電力な APU です。これを交換してみようということですね。

発熱に対する対策は電力制限を行い、消費電力を抑えることになります。BIOS の Precision Boost OverDrive の設定にある PPT を 4750G 並に制限して、性能の低下が許容できる範囲に収まれば採用するつもりで、テストを行いました。

ここで、メイン機に入る候補の CPU がもう一つ。Ryzen 9 3900X です。5950X の前に使っていた CPU ですね。隠居した後は初夢を見るのに使ってみたりと、いろいろと遊んでいます。4750G と 3900X はどちらも Zen2 世代。ついでにこちらもテストしてみることにしました。

PPT の設定をいろいろ変化させて、性能測定を行いました。なかなか興味深い特性を持っていることが分かったので、さっそくベンチマークの結果を確認してみましょう。


OS:Windows 11 Pro 64bit
Motherboard:ASRock B550M-ITX/ac (AMD B550 Chipset)
CPU Cooler:Scythe BIG Shuriken3 
RAM:Crucial CT2K16G4DFD832A (DDR4-3200 native CL22 16GBx2)
VGA:MSI GeForce GTX 1050 Ti 4GT LP (GeForce GTX 1050 Ti)
USB Sound:Steinberg Yamaha UR22 w/ iFi-Audio iPurifier3 B Type
Speaker:Yamaha NX-50
SSD1:Adata XPG SX8200 Pro ASX8200PNP-512GT-C (512GB M.2 NVMe Gen3)
SSD2:Kioxia EXCERIA SSD-CK960S/N (960GB SATA)
HDD:Seagate ST4000DM000 (4TB, 5980rpm)
BD:Panasonic UJ-240 (BD-RE, DVD-RW, CD-RW
LCD:EIZO FlexScan EV2785 (27" 4K 60Hz) 
PSU:SilverStone SST-SF45SF V3 (450W 80PLUS Bronze)
Case:SilverStone SST-ML08B-H

今回は Cinebench だけで比較を行いました。メイン機でゲームも、動画編集も行わないので、単純な性能の比較だけで十分だと考えました。

TDP 65W で Ryzen を動かすのなら、PPT は 88W に設定すればよいのですが、APU ではない Ryzen はグラボ(GTX 1050 Ti)を搭載する必要があるので、その分を上乗せして絞ってみました。4750G は定格通りの PPT 88W で測定しています。

まず、PPT 65W の状態で測定。3900X は順当に 4750G のスコアを上回ったのですが… 5950X のスコアがまったく振るいません。クロックの推移を見ていると、マルチスレッドの測定中は全コア 2GHz 台でずっと動いています。どうやら、電力が全く足りていないようです。

試しに 1コアで 2スレッド走らせてくれる SMT を OFF にして、16コア 16スレッドの状態でも測定してみましたが、なんと 16コア 32スレッドのスコアとほとんど変わらず。電力が不足すると、こんなことになってしまうんですね…。意外と 3900X が優秀なのにも驚きです。

マルチスレッドでは苦しんでいる 5950X ですが、シングルスレッドでは影響がないようで、その性能を遺憾なく発揮しています。さすがは Zen3! といったところです。実際に、電力を絞った状態でも周波数は 4.9GHz に到達していました。

いろいろと試した結果、5950X は PPT が 68W の時に 4700G のスコアに並び始め、PPT を 77W まで増加させると、動作に少し余裕がありそうな雰囲気になってきました。このあたりでベンチマーク中の CPU 温度が 85℃ 寸前に。このあたりで手を打っておくのが良さそうと判断し、5950X を PPT 77W で運用することにしました。

低電力状態における Ryzen の性能は優秀だとよく言われているところですが、電力の絞りすぎはよくないことがよく分かりました。それにしても、ついにメイン機が16コア 32スレッドに到達してしまいました。写真の RAW 現像をしてみたりしたのですが、4750G よりも明らかに速いです。

しばらくは性能的に不満がないでしょうが、本当に夏が乗り切れるのか? それだけが少し心配です…。

ついに我が家にも Zen4 着弾。Ryzen 9 7950X がやってきた!

Ryzen 9 7950X を 12月初めに買ってしまいました。5950X で行けるところまで粘るつもりだったのですが…。Yahoo!ショッピングで安くなっているのを見つけ、勢いで買ってしまったのでした。

その後、少し時間をかけてマザーボードとメモリを調達。AM5ソケットのマザーボードに DDR5 メモリと、新規格のパーツがずらり。新しい時代を感じさせてくれます。さて、早速組み立てることに。

まずは CPU の見た目。AMD も CPU 側にピンがない LGA タイプになりました。インテルではずいぶん前から LGA だったわけですが、ピン数が増えてきた AMD もついに同じになったっていうことですね。ヒートスプレッダも形状が変わり、熱伝導グリスの塗るのに気を遣いそうなデザインです。

続いて、マザーボードとメモリです。マザーボードは価格が最も安かった MSIPRO B650M-A WIFI を選択。メモリは Essencore の DDR5-4800、16GB 2枚組を選びました。初めての DDR5 だったので安いものを選んだのですが、このメモリが後で化けてすごいことに…!

新しいパーツに見とれながら、環境移行の準備。Windows のシステムを維持したままマザーボードを交換する場合は、先に別の SSDWindows を新規インストールし、ライセンス認証をしておくと、ライセンス認証の問題を抱えることなく SSD を載せ替えることができます。

というわけで、基板むき出しの状態でテスト運転。ここで手頃なCPUクーラーはないかと探したところ、3900X に付属のリテールクーラー、Wraith Prism があったので、これを使ってみることに。爆熱で有名な Ryzen 7000 シリーズなので、BIOSEco-mode を有効にしてインストール作業を進めました。OS は Windows 10 Proです。

インストールが終わってライセンス認証ができたら、SSD を移植します。5950X のシステムから Samsung 980 PRO を取り外し、新しいマザーボードに取り付けます。そして、前の AM4 マザーを外したケースの中へ。今度は簡易水冷も取り付けます。

さて、いよいよお待ちかねの性能測定です。5950X からどの程度速くなっているのか、見物です。その前に、ベンチマークを走らせながらメモリの設定をいろいろ試したのですが、1.25V で DDR5-6000 (36-38-38-76) に到達。倍以上の価格の OCメモリの性能にあっさりと到達できたのでした。というわけで、DDR5-4800 と DDR5-6000 の性能比較もしてみることにしました。


OS:Windows 10 Pro 64bit
Motherboard:MSI PRO B650M-A WIFI (AMD B650 Chipset)
CPU:AMD Ryzen 9 7950X
CPU Cooler:Corsair H100i RGB Platinum
RAM:Eseencore KD5AGUA80-48G400DA (DDR5-4800 CL40 16GBx2)
GPU:MSI GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G OC
SSD:Samsung SSD 980 PRO (1TB M.2 NVMe Gen4) 
PSU:Cooler Master MWE Gold 750 Full Modular 750W (750W 80PLUS Gold)
Case:Cooler Master Silencio S400 TG

(比較用旧環境)
Motherboard
:ASRock X570M Pro4 (AMD X570 Chipset)
CPU:AMD Ryzen 9 5950X
RAM:Patriot Viper Steel PVS416G440C9K (DDR4-3600 CL14 8GBx2)

まずは Cinebench から。いつの間にかバージョンが23になっていて、10分間耐久モードが追加されています。簡単に負荷テストをしたいときは便利ですね。バージョン15も測定しましたが、5950X との比較では 7950X は 20~30%増しの性能です。同じ16コア32スレッドにもかかわらず、いきなりすさまじい性能です。

マルチスレッドもすごいのですが、シングルスレッドの処理もものすごく速くなっています。それもそのはず、モニタリングをしていると 5.5GHz あたりをずっと維持しています。5950X は PBO の設定を詰めていくつかのコアがやっと 5GHz に達する感じなのに対し、7950X は 当たり前に 5.9GHz まで上昇しています。超ハイクロックで普通に駆動できるのが Ryzen 7000 シリーズの特徴のようです。

今度はファイナルファンタジーバージョン15では 5950X が優勢な結果に。バージョン14はかろうじて 7950X が上回っています。発熱のせいなのか、メモリの性能の引き出し具合の差なのか、少しここは謎な結果になりました。

この PC で普段使うのが TMPGEnc ですベンチマークの設定を見直し、普段のエンコードの設定に近づけてみました。フィルタはすべて、輪郭強調と色調補正を有効にしています。これをソフトウェアエンコードと NVEnc を使ったハードウェアエンコードで比較することで、フィルタ処理にかかる時間の比較ができると考えました。

結果は、7950X が圧勝。そして、メモリの性能が無視できなさそうな時間の差が現れました。5分間の動画をエンコードするだけで DDR5-4800 と DDR5-6000 の間で10~15秒の差が出るということは、1時間で 2~3分の差になります。最近は仕事のために動画編集をすることが増えてきたので、この差は無視できません。

あとは、ハードウェアエンコードの結果から、フィルタ処理の性能がかなりよくなっていることが分かります。TMPGEnc は手軽に高画質が得られるのですが、フィルタ処理のマルチスレッド処理が苦手です。ここでシングルスレッドの速さが効いてきているのかな、と思いました。


という感じで、Ryzen 9 7950X の圧倒的な性能を見せつけられたのですが、気になるのが消費電力と温度。システム全体の消費電力は 460W を超え、CPU の温度はリミットいっぱいの 95℃。ちょっと常用には厳しい感じです。

BIOS の Precision Boost OverDrive の設定にある PPT を 190W に制限すると、性能の低下はほとんど無い状態を維持したまま、消費電力と温度がいい感じに落ち着くことが分かったので、これで運用することに。システム全体の消費電力は 410W を下回り、負荷を最大限かけているときの CPU の温度は 85℃ の手前で落ち着いています。

メモリを DDR5-6000 に OC している状態ですが、24時間負荷をかけ続けても不具合は全くありません。5950X のときはメモリ周りにかなり悩まされたのですが、今回はド安定です。

CPU・マザー・メモリの同時交換は Ryzen が登場したとき以来になりましたが、新時代の性能はなかなかのもの。新しい CPU とも楽しく付き合っていこうと思います。

メモリ不足の Let's note の SSD を KIOXIA にしたら、ダメダメだった話。

もうかれこれ5年以上使っている Let's note SZ5。HDDモデルなのですが、使用初日にSSDSanDisk SSD UltraII 960GB に換装し、順調に使ってきました。SDカードリーダーも、DVDスーパーマルチドライブも、VGAコネクタもついていて、どこに持って行っても困らない1台なのですが、メモリが 4GB。少々心許ないスペックになってきました。

起動直後からメモリ使用量は 3GB と逼迫。メモリスワップは多分起きている。だいぶ使い込んできたし、SSD を新品に交換してみようかなと思い立ちました。購入したのは KIOXIA EXCERIA SATA SSD 960GB。同じ容量の東芝キオクシアの最新モデルです。これに交換すれば、動作も少しは速くなるかなと思ったのですが…考えが甘かった

データをコピーして起動させてみると、めちゃくちゃ遅い。初期の SSD であったプチフリどころではない、処理待ちが発生することも。SSD の使用率がずっと100%で、全く処理が追いついていないことが分かります。試しに、ベンチマークを取ってみることに。

リードはやや遅めですが、ライトは速い。このスコア差で体感差が出るとは思えない。なのに、圧倒的体感差。アライメントも合っている。結局、KIOXIA の SSD への感想は諦め、SandiskSSDに戻すことにしました。戻すと体感は元通りに。

実は、SanDisk SSD UltraII 960GB は DRAMキャッシュ搭載、KIOXIA EXCERIA SATA SSD 960GB は DRAM キャッシュ非搭載のモデル。正直、今時の SATA 性能上限いっぱいまで使い切っている SSD で体感差はないでしょう、と思っていたのですが、DRAMキャッシュはとても大事だったようです。

システムディスクには DRAMキャッシュ搭載のものを必ず選ぼう、と心に誓ったのでした。